2007 Fiscal Year Annual Research Report
戦前期における日系カナダ移民の日本語文学環境の調査研究
Project/Area Number |
19652019
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
日高 佳紀 Nara University of Education, 教育学部, 准教授 (00335465)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上谷 順三郎 鹿児島大学, 教育学部, 准教授 (10233941)
日比 嘉高 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (80334019)
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Keywords | カナダ / 日系移民 / 日本語 / 文学 / 言語政策 |
Research Abstract |
本研究の1年目にあたる19年度は、以下三点にわたる内容での研究を展開した。 第一点目は、研究課題の絞り込みである。研究分担者とともに5回にわたる研究会議を行い、各回でそれぞれのテーマごとの課題を出し合い、その内容や方法についての討議をおこなった。また、その過程で、他領域(地理学)の日系カナダ移民研究の専門家に講演を依頼し、移民研究の具体的な方法と課題、さらには具体的な研究内容についての示唆を受けた。こうした活動を通して、次年度以降の具体的な研究の方針を定めることができた。 第二点目は、日系カナダ移民関連の現地調査である。国内においては、カナダ移民の出身地として有名な和歌山県日高郡美浜町(旧三尾村)においてカナダ資料館を訪ね、同館館長から三尾とカナダの関係についての説明を受けるとともに、旧村内の関係施設の視察をおこなった。また、カナダ・バンクーバー市に出向き、国立日系カナダ人博物館やバンクーバー日本語学校などを訪問、資料閲覧と収集、および現地日系カナダ人への聞き取りをおこなうとともに、関係施設の担当者と研究打ち合わせをおこなった。次年度以降、研究分担者とともにバンクーバーでおこなう本格調査の準備をほぼ完了することができた。 第三点目は、戦前期カナダの日系エスニック紙『大陸日報』(1907年創刊)における文芸記事の分析である。今年は初期段階に連載していた長編小説「志士活躍馬賊王」(1910)の言説と同時代の移民を取り巻く環境の関連性について分析し、論文「カナダで満洲馬賊小説を読むということ」にまとめた。研究成果の一部を具体化したのみならず、移民読者の読書行為論的な視座を導入することでの移民研究の新たな可能性についても言及した。
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