2008 Fiscal Year Annual Research Report
戦前期における日系カナダ移民の日本語文学環境の調査研究
Project/Area Number |
19652019
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
日高 佳紀 Nara University of Education, 教育学部, 准教授 (00335465)
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Keywords | カナダ / 日系移民 / 日本語 / 文学 / 言語政策 |
Research Abstract |
本研究の2年目にあたる20年度は、以下三点にわたる内容で研究をおこなった。 第一点目は、カナダにおける実地調査と資料収集である。連携協力者の上谷順三郎(鹿児島大学教授、日本語教育・言語政策面の調査を担当)、日比嘉高(京都教育大学准教授、米国の日系移民との比較研究を担当)とともにバンクーバー市のブリティッシュ・コロンビア大学図書館、国立日系カナダ人博物館、バンクーバー日本語学校などで資料収集し、また、現地日系カナダ人への聞き取り調査をおこなった。この実地調査を通して、戦前期の日本語教育環境や晩香坡日本文庫の概要を知る上での資料を得ることができた。また、聞き取り調査からは戦前期の目系人コミュニティの具体的な状況や日本語教育の影響について知ることができた。21年度も引き続き調査をおこなう予定である。 第二点目は、戦前期の日系コミュニティで流通した文学的な言説の分析である。今年度は、第一次世界大戦直後に日系エスニック紙『大陸日報』の主筆としてカナダに赴任したジャーナリスト鈴木悦が発表した記事に着目し、その具体的な言説分析をおこなった。日本におけるトルストイの紹介者として知られる鈴木は、『大陸日報』着任時に、カナダへの渡航途中の船上で邂逅した亡命ロシア人とのやりとりを記事にしている。ここには同時代の日本とロシアをめぐる政治的状況が反映されているとともに、日系カナダ人読者に向けられたメッセージが表されている。その言説表象をレトリックの側面を含めて捉えることで、後にカナダにおける日系人労働運動の指導者となっていく鈴木悦の政治思想的立場を明らかにした。 第三点目は、『大陸日報』における文芸関連記事のデータベース化の作業である。学生アルバイトに依頼して記事のピックアップをおこなっているところである。21年度も引き続き作業をおこない、データベースの完成を目指したい。
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Research Products
(1 results)