2007 Fiscal Year Annual Research Report
チェコ民族再生運動期におけるチェコ語・チェコ文学への肯定と否定
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19652026
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
石川 達夫 Kobe University, 国際文化学研究科, 教授 (00212845)
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Keywords | チェコ / 民族再生運動 / ナショナリズム |
Research Abstract |
(1)チェコ民族再生運動期には、ドイツ語・ドイツ文化と比べたチェコ語・チェコ文化の「劣等性」の故に、チェコ人がドイツ人に同化せずにチェコ語・チェコ文化を再生させること自体の意義が問題になり、チェコ語・チェコ文化の存在意義に対する賛否両論が繰り広げられた。本研究では、その賛否両論を、チェコ史の黎明期まで遡り、特にバロック期のバルビーンの「チェコ語の擁護」を詳細に分析しつつ明らかにした。その際、シャウエルのようにチェコ人の中にチェコ語・チェコ文化の存在意義を否定する見解があったことと、ゲーテや(プラハのドイツ人作家)ヴェンツィヒなどドイツ人の中にもチェコ語とチェコ文学の再生の努力を強く支持したり援助したりした者がいたことに注目し、チェコ民族再生運動を否定したチェコ人とそれを支持したドイツ人の言説と活動をも分析した。更に、賛否両論の論者を論争させたユングマンの著作を中心にして、賛否両論がいかなる論拠をもちだして論争したのかを明らかにした。 (2)チェコ民族再生運動から発展したチェコ・ナショナリズムを発展させたロマン主義的なユングマンの思想を分析し、それと、ナショナリズムを越える思想を唱えた啓蒙主義的なボルザノとを比較して、両者の相違を明らかにした。 (3)(2)を踏まえつつ、チェコスロヴァキア独立後に顕著になったチェコ・ナショナリズムの弱点と、20世紀の哲学者パトチカのチェコ民族再生運動観とチェコ・ナショナリズム批判を明らかにした。引き続き、ナショナリズムの否定的な側面をいかにして超克しうるかを探っているところである。
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Research Products
(3 results)