Research Abstract |
今年度は,2007年夏に,ジョイスの生まれ育ったダブリンおよびダブリン近郊で,ジョイスが生活した約20軒の家およびその周囲の衰境を実題調査した。また,イェイツの母方の故郷であり,子供のころしばしば夏を過ごしたスライゴーを訪れイェイツサマースクールに参加し,アイルランド,イギリスをはじめインドや日本の研究者と意見,情報を交換した.ジョイスが第一次世界大戦中過ごしたチューリッヒを訪れ,ジョイスの『ユリシーズ』のワークショップに参加し,アイルランド,アメリカ,スイスの研究者と意見,情報を交換した。その後,ジョイスが住んだポーラ,トリエステで町の宗教的環境を調査し,とりわけトリエステの多様な宗教性が特筆するベきもので,カトリックが数の上では支配的であるものの,ギリシア正教,ユダヤ教,プロテスタントが町の中心部に堂々と教会,シナゴーグを構えていることを確認した。そのような都市環境で暮らすユダヤ人が『ユリシーズ』のブルームのモデルになった必然性について考察を深めた。 べルファーストを訪れ,イェイツやエリオットの影響を受けたマクニースの生育環境についても現地調査をした。こうした研究の成果の一部を,帰国後,Iasil Japan International Conferendeのシンポジウムでマクニースとイェイツ,ジョイス,エリオットとの比較をしつつ論じる形で発表した。また,ジョイスについては,そのトポグラフィカルな想像力についての論考を執筆中である。
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