2008 Fiscal Year Annual Research Report
コロンビア国民文学研究-20世紀前半文芸誌における国民主体の創出をめぐって-
Project/Area Number |
19652033
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
久野 量一 Hosei University, 経済学部, 准教授 (70409340)
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Keywords | コロンビア / 国民文学 / ナショナリズム / ガルシア・マルケス / ラテンアメリカ |
Research Abstract |
2年目の今年度、研究代表者は2008年6月から7月にかけて、コロンビア・カルタヘナで開催された、第2回ガルシア=マルケス的世界横断会議(II TRAVESIA POR LA GEOGRAFIA GARCIAMARQU EANA)に赴いて研究発表を行った。この催しはボリーバル工科大学が主催するもので、コロンビアの国民文学形成史を批判的にとらえ直すことを目標とする本研究課題と密接にかかわっている。研究代表者はこの催しにおいて、日本文学の文脈と20世紀初頭の前衛文学の流れとの比較を踏まえつつ、コロンビアの国民文学史におけるガルシア=マルケスの位置づけを再検討した。現地では会議参加者であるボリーバル工科大学の文学研究者で作家でもあるオスカル・コジャソス氏、文化研究者アルベルト・アベーリョ氏、バランキーリャ・アトランティコ大学の文学研究者アリエル・カスティーリョ氏、ハベリアナ大学のクリスト・フィゲロア氏、ラテンアメリカ文学批評家のジェラルド・マーティン氏らと意見交換を行った。研究代表者の発表に対する彼らから得られたコメントとして、「日本」という文脈からガルシア=マルケス、コロンビア文学を論じたことが意義深い、というのがあった。 意見交換の場では、コロンビア・カリブ文学の枠組みと、アンティール諸島におけるカリブ文学の枠組みの違いをめぐって議論が起きたが、今後コロンビア文学を再検討するうえで有意義な議論を聞くことができた。さらに当地訪問中にはコロンビアの大きな社会問題のひとつである誘拐事件の解決があり、コロンビアにおけるナショナリズムの在り方の具体的な事例を直視するうえで有用だった。この二つの出来事はともに偶発的に起きたことで、当初の研究実施計画に含むことは不可能であった。だが現地を訪れていたがゆえに立ち会うことができたという事実は、現場を自分の足で実際に歩くことの重要さを改めて教えてくれた。
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