2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19652034
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小野 芳彦 Hokkaido University, 大学院・文学研究科, 教授 (20126022)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 重広 北海道大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (40283048)
山田 友幸 北海道大学, 大学院・文学研究科, 教授 (40166723)
中戸川 孝治 北海道大学, 大学院・文学研究科, 教授 (20237316)
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Keywords | 語用論 / 日本語学 / 動的側面 / 関連性理論 / 演繹的推論規則 / 意図の論理 / 談話分析 / 発話行為 |
Research Abstract |
本研究は、語用論の動的側面の形式化を図ろうとするものである。 本年度は、第一に、前年度の口頭発表を改定し、発表論文集に発表した。 第二に、語用論が動的側面を持つ根本的な原因について論理的に検討した。基本的な伝達の理論として関連性理論をすえた場合、関連性の原理によって、推論は一本道に進むことが期待される。また、その推論を単純に形式化したものも動的な変化を支えることは出来ない。したがって、19年度に設定したような伝達を形式化した更新関数だけでは動的な語用論を構築することはできない。そもそも、関連性理論は単独の発話の伝達を説明する理論であり、談話(=複数の発話連続)レベルを説明するマクロな理論のミクロレベルの基礎なのである。そして、語用論の動的側面は、談話レベルのマクロな原理がミクロな更新関数に修正を施すからであると説明できる。関連性理論のいう総合的演繹規則を更新関数とする我々の形式化では、発話自身が変化しなくても、話者の意図の切り替えによって、適用する演繹規則が切り替わることができ、語用論的な解釈の動的側面をうまく説明することが出来る。このような原理的な検討により、我々の形式化は語用論全体をカバーでき、その動的な側面を説明することが示された。 第三に、談話レベルのマクロな原理の形式化を検討した。西洋語のようないわゆる"論理的な"言語での会話では、話者の未来指向意図に基づく"意図の論理"がある程度の成功を収めているが、日本語のような"緩い論理"に基づく場合については検討されていなかった。意図の論理に従わないような会話例について、実はその意図が部分構造であって大局的意図への昇華が可能であるとして説明できるものかどうか、また、昇華が可能であるとして伝達のミクロな機構とどう関わるかについて検討を行なった。
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