2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19652038
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福原 信義 Osaka University, 世界言語研究センター, 教授 (40030168)
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Keywords | 現代アラム語 / シリア語 / 東方キリスト教 / シリア語写本 / カルシューニー文書 |
Research Abstract |
2007年8月5日から9月27日までの約2ヶ月間エジプト・アラブ共和国及びシリア・アラブ共和国を訪問、両国のキリスト教関係の村落、施設を訪ね現代アラム語の記録と調査、アラビア語、シリア語写本の調査を実施した。 1、シリア共和国のアンチ・レバノン山中に位置するマアルーラ村に拠点を置き、近隣のバハア村、ジュッバアディーン村の西現代アラム語の調査を行った。西アラム語が残存するこれら三村で日常会話、民話、伝説などを録音収集、アラビア語とアラム語の二重言語生活の実態を調査するととともに、三村間の基礎語彙の比較研究を行った。録音した音声資料は、目下整理できたものから順次CD化、音声記号による文字化を進めている。三村間の比較基礎語彙集は、ほぼ完成した。 2、シリア共和国及びエジプト共和国のキリスト教関係の施設を訪問し、施設が保有するアラビア語、シリア語写本の調査を行った。特にシリアにおいては調査がほとんど行われていない手付かずの写本がキリスト教会施設に数多くあることが判明した。(1)シリア正教会総大司教府の所有していた写本数百冊の所在が判明した。アレッポで行った調査で(2)約200冊のアラビア語写本がある宗派の司教館の倉庫に収蔵されているのを発見、サンプル写真を撮った。(3)約1,500冊の写本が別の宗派の司教館に所蔵されていることが判明、サンプル写真を撮った。その内容はアラビア語、シリア語、カルシューニー文書から成り、正に未知の宝庫である。管理状態も悪く散逸、紛失する恐れがあり、写本のデジタル写真撮影による保存を提案したところ、ある条件の下での撮影を許可された。来年度から撮影チームを組織して実施したい。今後ともこれほど膨大な資料が収集されることは世界的にも稀有のことであり、成功すれば、東方キリスト教、キリスト教から見た中東史の一次資料をわが国が持つことになる。
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