2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19652064
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
麓 慎一 Niigata University, 人文社会・教育科学系, 准教授 (30261259)
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Keywords | 露米会社 / ロシア領アメリカ / 明治天皇 / 片岡侍従 / アイヌ / ラッコ / 国境 / ゴローニン |
Research Abstract |
本年度は、以下の三つの点で実績をあげることができた。第一は、ロシア外務省外交資料館において樺太・千島交換条約締結後にロシア側が千島列島に残留したアイヌをカムチャッカに移住させる構想を持っていた事実を発見した。この問題との関連で、樺太・千島交換条約後も千島列島のアイヌがカムチャッカのロシア人と継続的に交易を行っていたことを解明した。このことは、日本とロシアの条約締結後も国境が十分機能していなかったことを示すものであり、国民国家の形成と国境の問題を考察するうえで、大きな手掛かりを得ることに成功した。第二は、露米会社崩壊後の環太平洋の海洋秩序の問題を検討することができた。ロシア領アメリカ(アラスカ)のアメリカへの売却によって環太平洋の海洋秩序が崩壊し、多くの毛皮獣密漁者が千島列島にやってくるようになった。この密漁者の問題は、従来からも研究されているが、これが露米会社の崩壊と関連していることを解明することができた。さらに、この問題に明治天皇が懸念を表明し、明治24年に片岡侍従を北千島に派遣した経緯についても国立国会図書館憲政資料室の片岡侍従文書を使って解析することができた。第三には、ロシア領アメリカ(アラスカ)の売却先であるアメリカ側の資料をアメリカ合衆国国立文書館において収集することに成功した。日本国内に所蔵されている露米会社の研究者であるギブソンおよびレンセンなどの著名なアメリカ人研究者の資料と合わせて、新たな知見を得ることができた。
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