2007 Fiscal Year Annual Research Report
「映像」に基づく入類学の構築-映像的/理論的パースペクティブの研究
Project/Area Number |
19652076
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
箭内 匡 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (20319924)
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Keywords | 文化人類学 / 社会学 / 映像 / 理論 / パースペクティブ |
Research Abstract |
本年度の研究の目的は、人類学的フィールドにおける「イメージ」(ここでは「現実」とほぼ同じ意味と考えてよい)を映像を通じてより直接的に思考する方法を模索することであった。 研究の主な部分は、広義での人類学的映像(民族誌写真、民族誌映像、および民族誌的な性格をもつ映画等)における映像的パースペクティブと理論的パースペクティブとの関係を具体的に探究することであったが、これに関しては、両者の潜在的な相互関係や、そうした関係を顕在化させることの実践的な重要性を、学会誌『文化人類学』に提出した論文(現在査読中)で説得的な形で示すことができたと考える(より抽象度の高い問題は『思想』に掲載の論文でも考察した)。そうした中、今後の課題として、第一に映像的/理論的パースペクティブの媒介項として参入する「人々の」パースペクティブをどう扱うか、第二にイメージをベースとして思考する中で言葉の問題をどう再考するか、の二つの問題が浮かび上がってきた(環在、後者の問題性の中でレヴィ=ストロースの仕事を再度検討する作業を行っている)。 他方、上記の問題を実践的に考えるために行った南米チリでの調査でも、同様の問題が浮上してきたとも言える。撮影上の現実的な問題としても(いかに人類学的に「意味のある」映像を撮るか)、また今日の先住民の状況の中での実際的な理由(肖像権の問題を含め)としても、人々が被写体および撮影者として撮影行為に積極的に参与することが不可欠になってきているが、それは「人々の」パースペクティブの介入という点から考えて、決して否定的なことではない。そうした「人々」のパースペクティブを、彼らが直面する言葉(開発等に関する言葉を含め)とどう関係づけて考察するかが、重要な課題として現われた。これらの問題は、平成20年度の研究において引き続き考察したい。
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