2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19653002
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
梅田 康夫 Kanazawa University, 法学系, 教授 (50113874)
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Keywords | 鎌倉幕府 / 武家奉行人 / 鎌倉奉行人 / 引付 / 法曹官僚 / 金沢藩 / 公事宿 / 在野法曹 |
Research Abstract |
本年度は、中世の幕府組織において法曹的な機能を営んでいた思われる吏僚層の分析を行なった。特に鎌倉期における奉行人の実態を解明することに力を注いだ。鎌倉幕府の各組織に配置されていた奉行人層を法曹官僚として捉えることが可能かという点を検証するため、奉行人についての基礎的な考察を行なった。まず奉行人という範疇は武家社会のみならず、公家社会にも存在したことを明らかにし、奉行人は公家奉行人と武家奉行人に大別し得ること、また、鎌倉期の武家奉行人は幕府組織の所在地との関連からすると、鎌倉奉行人、六波羅奉行人、鎮西奉行人の三種類に分類されることを明らかにした。その上で、中心となる鎌倉奉行人について各種各様の奉行人が存在し、そのうち幕府中枢に関係する吏僚層を職務分掌のあり方から分類した、公事奉行人、官途奉行人、寺社奉行人、雑人奉行人等について、その性格や実態を究明した。その結果、一口に奉行人といってもそこには様々な種類のものがあり、その概念はかなり茫漠としていて、従来、奉行人という概念を包括的に論じている研究はなかったが、あらためてその基礎的な分析を通してみると、奉行人という階層全体を実務的な官僚層、あるいは法曹官僚とみることは困難であることが判明した。今後、引付奉行人等の分析をさらに進めて、法曹官僚として位置づけられ得る奉行人の条件や資質等について、具体的に明らかにしていく予定である。 なお、本年度の後半では、近世社会における在野法曹としての公事宿について、金沢藩を対象としてその分析を試みる予定であったが、基本的な文献および史料の収集のみにとどまってしまった。金沢藩における公事宿の存在と機能については、まだ具体的な解明までには至らず、今後の課題として残された。
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Research Products
(1 results)