2008 Fiscal Year Annual Research Report
「法と経済学」の適用と限界に関する総合的研究-知的財産法を素材として-
Project/Area Number |
19653010
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
潮海 久雄 University of Tsukuba, 大学院・ビジネス科学研究科, 教授 (80304567)
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Keywords | 法と経済学 / 知的財産法 / データ分析 |
Research Abstract |
現在立法が検討されている著作権法のフェアユースおよび著作権侵害主体のサーチエンジンという新しい事例を以下の諸点から分析を試みた。アメリカでの学説をもとに、法的分析(最高裁判例の先例拘束性、法律要件へのあてはめ)、歴史分析(裁判例の事実と法律構成の対応)、データ分析(下級審裁判例が採用した法律構成を回帰分析等おこなったもの)、経済分析(ミクロ経済学の視点からフェアユースにおける具体的問題を分析したもの)、制度分析(ruleとstandard)の角度から検討を行い、法学で従来おこなわれてきた法的分析、歴史分析と、経済分析ζ制度分析のメリット、デメリットを検討した。 まず、アメリカのデータ分析は2005年までで、インターネット上のサーチエンジンの事例は含まれていないため、それ以前のデータ分析とどのように質的に異なるのかを分析する必要が生じた。フェアユースでは経済分析による社会的厚生を最大化する目的が、法的安定性を上回るかが問題となっていること、および、先例拘束性による安定的な判例法の展開をどのように担保するかが重要となっている。つまり、法的安定性と経済的効率性が衝突する場面として方法論としてもきわめて重要な意義を有する。 また、データ分析も、フェアユースのような多種多様な事例について、類型化して分析していない点で限界が存在し、それが将来の新しい事例に適用することは困難であることが明らかになった。さらに、制度分析(ruleとstandard)の適用についてアメリカの議論をそのまま導入しているわが国の学説と私の適用結果が正反対となった。その差は比較法分析(ドイツ法)および具体的事例の法的分析・歴史分析であり、法と経済学をそのまま輸入することの限界が明らかとなった。 これに対して、外部性という経済学の視点から、フェアユースの法理が不法行為や財産権の構成と異なることも明らかとなった。
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Research Products
(1 results)