Research Abstract |
本研究では,高機能自閉症児における視覚的注意の特徴の把握や,その特徴を環境や教材の調整によって制御できる可能性について検討した。すなわち,高機能自閉症児および健常成人を対象に,階層的情報処理刺激(例 小さなAを多数並べてHの文字を構成する)を用いたストループ課題(部分の文字を答える条件,および,全体の文宇を答える条件がある)によって,視覚的注意の向け方について検討を行った。その際,両群共通サイズの刺激に加え,サイズの小さな刺激であれば自閉症児は全体に注意を向け,部分を無視しやすくなるか,また,極度にサイズの大きな刺激であれば,健常成人は部分に注意を向け,全体を無視しやすくなるかについて検討した。その結果,自閉症児は刺激サイズにかかわらず,全体の文字を答える条件で部分を無視できない傾向を示した。また,健常成人は刺激サイズにかかわらず,部分の文字を答える条件で全体を無視できない傾向を示した。つまり,自閉症児,健常成人ともに,視覚的注意の特徴は刺激サイズに依存しないことが示された。このことは,教材のサイズの調整では,自閉症児における注意の特徴は制御できないことを示しており,他の要因の検討が必要と考えられる。 一方,600余名の幼稚園児に対する発達スクリーニングテストの追跡調査において,不注意,多動といった注意の問題がどのように発達的変化を示すかについて検討した。その結果,発達障害が疑われる群では,そうでない群に比べて,介入の有無にかかわらず,年少時に見られた注意の問題が年長まで持続しやすい傾向が見られた。上記の研究と合わせて考えると,自閉症児における視覚的注意の特徴は変化しにくいものと考えられる。
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