2008 Fiscal Year Annual Research Report
「笑いの治癒力」を活かしたPDD者の対人コミュニケーションへの心理臨床的支援
Project/Area Number |
19653073
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田中 真理 Tohoku University, 大学院・教育学研究科, 准教授 (70274412)
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Keywords | 笑い / ユーモア / PDD / 対人関係 / 支援 |
Research Abstract |
「笑い」や「ユーモア」は、PDD者との親密なコミュニケーションをとる重要な窓口となる。また、認知的・社会的・情動的視点からPDD者の特性の本質にせまるにあたり、ユーモア理解や表出についての検討は、他者の心の理解における発達の困難性への支援のための新たな手がかりを切り拓く可能性が強調されている。そこで、PDD者は笑いやユーモア状況をいかにとらえているかについて、研究(1)ではユーモア理解の前提のひとつとなる話の不適合さについて、どのように認識し理解しているか、その特性を検討した。その認識の仕方とユーモア理解との関連について、研究(2)ではユーモア理解の認識的側面から、研究(3)では笑いの表出的側面から検討した。 その結果、研究(1)では、(1)話の不合理な点がどこかを推測可能、(2)根拠を言語的に的確に説明できない、(3)説明要求への認識の低さ、(4)不合理な点に気づかず課題文を単純に繰り返した可能性が考えられた。物理的状況と心理的状況を統合するなかでの不適合さに対しては、PDD者はそのとらえ方が非常に多様であることが示唆された。研究(2)では、表情やリズム、動きなど(A)で面白さを評価していたことが示された。また、非PDD者は自分の経験を照らし合わせて共感する報告が見られた一方、PDD者は、部分的な内容から面白さを評価しており、特にあり得ないことに面白さを評価していた。研究(3)では、情動表出(観察で得られた笑いの回数)と認識的評価(言語報告)が必ずしも一致していない事例の存在が明らかになった。しかし, 一方で本当に面白かったからというよりも, 面白いと評価してほしいという実験者の要求特性など面白さ以外の要因からの影響があると考えられた。
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