2007 Fiscal Year Annual Research Report
慢性疾患者の自律的な健康行動の形成を目指した病気対処尺度の開発
Project/Area Number |
19653074
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小玉 正博 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (00114075)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 富美代 桐蔭横浜大学, 工学部, 准教授 (70309649)
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Keywords | 慢性疾患者の病気対処 / 自律的健康行動 / 病気認知 / 病気表象 / 糖尿病 / 透析患者 |
Research Abstract |
本年度は透析患者の病気認知に関する感情表象の量的研究と糖尿病患者の言説分析によるセルフケア行動の維持形成および脱落抑制要因の質的研究を行った。 第一研究では,透析患者133名(男性95名、平均年齢62.4±8.53歳;女性37名平均年齢59.7±9.92歳;性別不明1名)を対象に,病気と治療に関する感情尺度IPQ-R,健康関連QOL尺度(EQ-5D),病気適応項目を施行した。その結果,病気を脅威と感じるかどうかが病気の適応やQOLに影響を及ぼしていることが確認された。さらに,病気に対してネガティブな表象と治療に対してポジティブな表象を示し,QOLには病気の陰性感情表象が直接的影響を与えていた。 第二研究では,壮年期糖尿病患者16名(男性7名,女性9名:平均年齢60.2歳)に半構造化面接調査を施行し,糖尿病患者のナラティブな病い体験を時間・空間的にとらえながら,自律的なケア行動の形成・維持要因あるいは脱落・抑制要因の力動的構造の質的検討を行った.最終的に分析対象とした13事例の面接内容は逐語化し,文字テキスト・データとした.分析の観点は,「自身の病気にどのように対処(認知,感情,行動)しているか」に焦点化し,対象者の言説分析から,事例横断的に共通する病気対処のスタイル,症状の安定・悪化に関連する心理社会的維持・妨害要因の同定を行った.その結果,彼らのセルフケア行動は「自分なりに実行している」という言説に集約される病気対処が抽出されたが,こうした対処は,医療者側が期待するセルフケア行動との間の解離があることを示した。また,病気対処の成否は,個人の生活状況に大きく依存することが示された。以上の結果から,病気対処スタイルの構築には病者のナラティブな病気認知の意味生成への実感を得ることが重要な要因であることが示唆された.
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