2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19653083
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 裕之 Kyushu University, 大学院・芸術工学研究院, 准教授 (40243977)
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Keywords | 実験心理学 / 運動知覚 / 眼球運動 / サッカード / 錯視 |
Research Abstract |
サッカードによる等輝度対象の動きの知覚の特性についてまとめ、他の静止画像が動いて見える錯視と比較した。背景と等輝度の静止視対象は、周辺視で見る際に、サッカードと反対方向に同期して動いて見えた。しかし逆に追従眼球運動時には、眼球運動と同方向に動いて見え、特に、放射線パタンの中央部におかれた等輝度対象は追従眼球運動による錯視が強いことを新たに見出した(この現象については国際学会(ECVP2010)で発表)。サッカード時の等輝度対象の運動錯視は、背景が赤で薄暗い視環境の中で起こるのに対し、新しく発見した追従運動時の運動錯視は直射日光下でも生じるため、前者では桿体の寄与による運動検出の遅れが、後者では等輝度による運動検出の弱さが原因と考えられた。一方、「蛇の回転」錯視は、サッカード間の凝視時に見え、追従眼球運動時には非常に弱いことがわかった[Tomimatsu,Ito,Seno & Sunaga(in press),Perception]。また、同一対象の中に輝度コントラストの反転した領域を含み、全体として背景と等輝度となる対象は、追従眼球運動時にコントラストの軸の方向に動いて見える錯視が生じることがわかったが[Ito,Anstis & Cavanagh(2009),Perception,38,1405-1409]、サッカードではこの錯視が生じなかった。これらの結果から、桿体の寄与によるサッカード抑制の失敗、および追従眼球運動による網膜像の運動検出の失敗(過大または過小評価)によって、同じ等輝度の視対象にそれぞれ別の運動錯視が生じることが明らかになった。また蛇の回転錯視のように、サッカードそのものはきっかけに過ぎず、逆に眼球運動中には弱くなる錯視も存在することがわかった。
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