2008 Fiscal Year Annual Research Report
地域文化の変容からみた近代教育システムの形成に関する比較史研究
Project/Area Number |
19653094
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
越水 雄二 Doshisha University, 社会学部, 准教授 (40293849)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 精一 相愛大学, 人間発達学部, 教授 (40269824)
北澤 義之 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (90257767)
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Keywords | 地域文化 / 近代教育システム / 比較教育史 / フランス:日本:ヨルダン / ブルターニュ / 沖縄 |
Research Abstract |
19世紀にブルターニュ地方へ学校教育とフランス語の使用が普及していった過程で、1880年代に法制化された近代公教育が、国民統合のためのフランス語教育により言語統一を進め、20世紀前半には地域言語ブレイス語に存続の危機をもたらしたことは、夙に原聖の研究に詳しい。しかし、教育現場の実態を探るG・ニコラの近年の研究によれば、1850〜60年代の初等学校では、地元出身の教師がフランス語指導にブレイス語も使用しており、当時の史料からは1880年代以降に顕在化したブレイス語の抑圧は予見できないという。第三共和政以前段階での二言語併用教育によるフランス語の普及は、地域文化の変容と近代教育システムの関係を問う上で見逃せない。なぜなら、そうした教育は、確かに国民統合を目指す近代公教育の形成過程において生じたが、しかしそこには、国家による教育政策の追求だけではなく、中央集権的に創出されつつあった教育システムが地域の利害に基づいて受容ないし利用されていた側面も窺えるからである。この側面を考えるには、20世紀前半の沖縄で、戦前から戦後へ日本語の標準語励行運動を推進した教師、山城宗雄の教育実践との比較が有益である。彼が生徒に生活の全体において標準語の使用を強制していたのは、生徒の「将来の幸福」のために必要な道徳的主体化の一部と考えていたからであった。しかしながら、1946年に独立し、今日、アラブ諸国内で教育の質に最も高い評価を受けているヨルダンでは、教育システムの近代化が地域言語の抑圧につながった事態は認められない。これには、国家建設の経緯や国民の構成といった政治的要因だけではなく、アラビア語の性質も関わっていると考えられる。以上のように、二事例の共通点から結論を急ぐのではなく、敢えてそれには収斂しない第三項の知見も交え多面的に考察を進めていきたい。
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Research Products
(4 results)