Research Abstract |
多層膜にX線等を45度で入射させると,その多層膜の方向と,X線等の偏光方向で,反射率,透過率とも大きな違いができる。この性質を利用した偏光計の性能評価実験と,偏光カメラの製作を行っている。多層膜はMo/Siの7層で2d=20nmの物を使用した。まず,性能評価実験は,高エネルギー加速器研究機構の放射光実験施設であるPFで行った。まず,入射角を45度に固定して,入射光の軸周りのいくつかの偏光角で,およそ70eVから200eVの間のエネルギー帯域で透過率測定を行った。また,入射エネルギーをいくつかの値に固定して,多層膜を光軸周りに回転させ,回転角に対する透過率を測定した。干渉の大きな92eV近くでは,回転角度による透過率の違いが大きく,干渉の小さな,85eVや100eVでは,回転角度による透過率の違いは無いことを確かめた。また,その結果Modulation Factorは,約42%が達成されていることを確かめた。この値は,ほぼ設計値通りである。これらの結果は日本天文学会にて報告している。なお,0.5インチ角の基板無しの多層膜を制作した。次に,偏光計のカメラのプロトタイプを制作した。カメラは,シャッター,45度に固定した多層膜の取り付け台,ステッピングモーターを使った台の回転機構,それから,撮像用の検出器としてHEAD基板を備えたのCCD素子と,CCDを冷却するための機構をひとつの箱に組み上げた。その後,55FeからのMnKX線を照射することで,単体として動作することを確認した。まだ,冷却性能等で,不足の点があるが,来年度に改善を行い,偏光計としての性能試験を行う予定である。
|