Research Abstract |
本年度は長谷川,その大学院生および研究員の守屋が共同して研究を推進した。その結果,19年度に予定していた計画を進めることができた。 長谷川と学生およびボスドク1名は,北海道北西部羽幌地域に分布する白亜系蝦夷層群のコニアシアン〜サントニアンに相当する層準の地質を精査した。そしてさまざまなタイプのノジュール(方解石ノジュール,菱鉄鉱ノジュール,マッシュルーム型ノジュール,扁平ノジュール,石灰質化石を含むもの,生痕化石だけを含むもの,等)を採集した。更に,可能な限りそれらのノジュールの周囲の母岩を800-1000g程度ずつ採敢した。いくつかのノジュールについて母岩とノジュールについて抽出性有機物を抽出した。ノジュール内部については縁辺から中心にかけて3-5箇所について抽出した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより脂肪族炭化水素,芳香族炭化水素,ケトン類,極性化合物類に分画した上で,炭化水素類についてガスクロマトグラフおよびガスクロマトグラフ質量分析装置を用いて分析した。その結果,炭化水素類の中には蝦夷層群に典型的に見られる陸上植物由来のn-アルカン,プリスタン,ファイタンなどのイソプレノイド類,ホパシ類,ステラン類などが検出された。ノジュール内部と比較すると母岩のほうが単位重量あたりの炭化水素類の含有量が多かったが,フィンガープリント(分子ピークの分布パターン)についてはどの部分から得た炭化水素類もほぼ同じであった。この事例だけを見ると,ノジュールの形成はバイオマーカー類の保存性向上に大きく寄与していないようであるが,ノジコールが堆積物の表層ではなく深部でできていたことに起因する可能性が高い。今後,採集した多種類のノジュール分析を進め,また炭素同位体比により表層付近でできたノジュールを同定することで,母岩と異なる情報を保持するノジュールの発見に努め,その要因を探っていく。また,ノジュール形成と有機物の関わりについて,田崎(共同研究者)と長谷川の院生が中心になって電子顕微鏡類を用いた観察を行う。
|