Research Abstract |
1.アミノ酸のエナンチオマー分離法の検討:AQC蛍光試薬を用いたプレカラム誘導体-逆相HPLC法や,キラルカラムを用いたHPLC法について検討し,イソバリン,ヒスチジン,アラニンなどのアミノ酸のエナンチオ分離条件を決めた。円二色検出器を用いる方法も検討したが,イソバリンには不適であることがわかった。他のアミノ酸への適用を検討する予定である。 2.アミノ酸等へのβ線照射:ロシアのSnezhinsk研究所の^<90>Sr-^<90>Y線源(50Ci)を用いて,アミノ酸(イソバリンなど),ヒスチジン銅錯体などへのβ線照射を行った。大線量照射のため,イソバリンはほぼ完全に分解してしまったが,ヒスチジン銅錯体は残存した。照射後のアミノ酸金属錯体のCDスペクトルを測定すると,照射前になかったピークが観測された。これはβ崩壊により生じる電子が左偏極していることに由来する可能性が考えられるので,さらに検証を進める予定である。ヒスチジン銅錯体にβ線照射後,ヒスチジンにエナンチオ過剰が検出されたが,その確認のため,再実験,およびのアミノ酸のD/L比の精密測定を準備中である。 3.アミノ酸等への円偏光紫外線照射:分子科学研究所UVSORIIの自由電子レーザー(FEL)を用いて右および左円偏光紫外線照射(215nm)をイソバリン水溶液に照射した。主要な分解生成物はアラニン,2-ブチルアミン,イソ吉草酸であった。このような特異的な分解はX線や重粒子線照射では観察されなかった。残存したイソバリンや生成したアラニンのエナンチオ比の測定を試みたが,有意の過剰は見られなかった。被照射溶液のpHの影響なども考えられるため,再実験を計画中である。一方,イソバリンの薄膜を作成して円偏光を照射した場合には,円二色性が検出され,円偏光による不斉の誘起が確認された。
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