Research Abstract |
本研究は, 蛍光性DNA結合試薬(リガンド)を利用するDNA損傷検出法の開発を目的とする。具体的には, DNA損傷修復過程の中間体として, あるいは塩基損傷に誘起される二重らせん構造の歪みにより生成する(疑似)脱塩基部位を, DNA損傷のマーカーとして「蛍光性リガンドにより検出すること」を試みる。平成20年度は, (1) チミン欠損を検出しうる蛍光性リガンドの開発を達成するとともに, (2) DNA損傷検出表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance, SPR)センサーを開発した。 (1) チミン欠損を標的とする場合, 対面塩基となるアデニンに対する結合リガンドを開発する必要があるが, アデニンとはワトソン・クリック型の塩基対として二点水素結合形成のみが可能であるため、アデニンに対する結合選択性と高親和力を発現させることが困難な状況にあった。ここでは, 種々の化合物をスクリーニングした結果, アデニンへの二点水素結合形成部位を有し, かつリガンドサイズを制御することで、アデニン(チミン欠損)検出リガンド(アロキサジン及びジメチルルマジン)を開発することに成功した。 (2) 一方, 1, 8-ナフチリジン誘導体やプテリジン誘導体, 3, 5-ジアミノピラジン誘導体を新規合成し, これらを感応素子として利用することで, 高感度・高選択的なDNA損傷検出SPRセンサーを開発した。ここでは, 核酸塩基認識プローブ(DNA結合リガンド)を金基板チップ上に配列・固定化したセンサー(フローセル型)を開発したもので, グアニン欠損及びシトシン欠損, アデニン欠損を検出することが可能である。いずれのセンサーも, 標的欠損含有DNAに対してほぼ特異的なSPR応答を示し, また, 蛍光法と比較してより低濃度のDNA解析に適用可能である。
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