2007 Fiscal Year Annual Research Report
退色した古代顔料や染料の復元に関する合成化学的研究
Project/Area Number |
19655032
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
荒木 修喜 Nagoya Institute of Technology, 工学研究科, 教授 (30115670)
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Keywords | 手彫切手 / ベルリンブルー / 酸化鉛 / 硫化水銀 / 酸化鉄 / 赤外スペクトル / 蛍光X線スペクトル / 顔料 |
Research Abstract |
1.手彫切手の製造に使用された印刷インキ中の顔料色素の分析 手彫切手のインキ中に含まれる色素成分を赤外スペクトルならびに蛍光X線スペクトルにより解析した。初期の手彫切手に用いられた青色顔料はベルリンブルーを主成分とすることが明らかにした。後期手彫切手の青色インキには重金属がほとんど含まれないことから有機色素を使用していることが推察された。赤色顔料は初期には辰砂(硫化水銀)が鉛成分と共に用いられているが、中期には鉛成分のみとなり、後期には金属を含まない有機色素に切り替えられていることが分かった。また黄色顔料は初期から後期まで一貫して鉛顔料(恐らく酸化鉛)が使用されている。また、茶色顔料は赤色顔料と黒色顔料の混合によるものではなく、酸化鉄を主成分とすることが明らかになった。このように手彫切手は比較的短期間に製造されたにもかかわらず、製造の初期と後期では全く別種の顔料を使用していることがはじめて明らかにされた。 2.退色・劣化した顔料色素の分析 手彫切手に使用された顔料の内、青色顔料と黄色顔料は比較的堅牢であるが、赤色顔料は変色や退色しやすいことが分かった。赤色顔料を次亜塩素酸を用いて酸化すると速やかに退色して淡黄色となることを見出し、この変化が酸化鉛の構造変化に由来すると推定できた。
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