Research Abstract |
本研究では,超分子相互作用能を有する部位を遷移金属分子触媒系に導入し,画期的な触媒機能を実現することを目的とする。超分子相互作用能を有する部位として,デンドリマー,ナノサイズ半球型,カリックスアレーン部位を採用し,これらを有する新規配位子を設計,合成し,新規超分子遷移金属分子触媒を創製した。デンドリマーは規則的な枝分かれ構造を有する樹木状物質であり,中心部が空間的に空いており(疎),周辺部になるにつれて混み合っている(密)という,立体的に疎密勾配構造のある極めて興味ある物質であり,ホスト機能を有する。また,1つの枝分かれ構造に対して1つの合成反応が対応しており,同じ合成反応を繰り返すことにより,高度に制御されたナノ空間を比較的容易に構築することができる。また,ナノサイズ半球型ホスフィンは,1nm以上の半径を有する半球の底部中央にリン原子を有するホスフィン配位子である。この配位子は,代表的なかさ高いホスフィン配位子であるP(t-Bu)3等とは異なり,リン原子近傍は空いており,そこから1nm以上離れたところに極めて大きな立体障害を有するというように,配位中心付近での空間を利用した超分子相互作用能を有している。さらに,カリックスアレーンはパラ置換フェノールとホルムアルデヒドとの環状縮合生成物であり,反応に用いる塩基の種類,反応条件などにより,生成物のカリックスアレーンの空孔の大きさをほぼ任意に変えることが出来た。また,カリックスアレーンの空孔は,高いホスト機能があり,従来にはない選択性を実現することが可能である。本研究においては,これらデンドリマー,ナノサイズ半球型ホスフィン,そしてカリックスアレーンというように,種々の異なる超分子相互作用部位を有する遷移金属分子触媒の創製を行った。触媒中心金属として,高い触媒活性が期待できるパラジウムおよびロジウム等を用い,従来にない高い触媒活性および選択性を有する超分子分子触媒系の創出に成功した。
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