2007 Fiscal Year Annual Research Report
同種および異種多核金属錯体触媒の創成と協奏的触媒反応の開発
Project/Area Number |
19655035
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
真島 和志 Osaka University, 基礎工学研究科, 教授 (70159143)
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Keywords | 亜鉛錯体 / クラスター / エステル化反応 / トランスエステル化反応 / アミノアルコール |
Research Abstract |
高選択的な遷移金属触媒反応の開発において触媒前駆体となる金属錯体の独創的かつ合理的な分子設計が最も重要である。また、その結果はしばしばこれまで用いられてきた合成反応ルートを一変させることがあり、基礎と実用の両面から活発に研究されている。生理活性物質は、金属酵素をはじめとする多くの酵素群により巧みに代謝(合成と分解)制御されている。金属酵素の注目すべき特徴は、多くの場合、金属が1つでなく2つ以上が協奏的に作用し、エステル結合やアミド結合などの合成と分解を行っていることである。たとえば、ペプチド結合の分解を担う金属酵素(アミノペプチダーゼ)は、2つの亜鉛が隣接した構造をとっている。このような金属酵素の触媒活性部位を参考として、同種および異種の金属から成る多核化金属錯体を合成し、人工酵素と呼ぶに相応しい新触媒反応の開発を目的としている。 われわれは、亜鉛の4核クラスター錯体Zn_4(・-0)(OCOCF_3)_6(1)が、カルボン酸、エステル、ラクトンとアミノアルコールから触媒的にオキサゾリンを合成する優れた触媒になることを見いだした。さらに、亜鉛クラスター錯体1が、アルコールおよびアミンの競争的アシル化反応において、アルコール選択的にアシル化反応が進行することを見いだした。有機合成反応では、アミンのアシル化のみが進行することがよく知られており、このような官能基選択性は達成できないと考えられてきたが、独自に開発した多核化金属錯体を触媒とすることで初めて実現できた。これらの優れた触媒機能は、アミノペプチダーゼやエステラーゼの活性部位と類似した"Zn-O-Zn"構造を持つことによると考えられ、他の有用生理活性物質合成反応の触媒となり得る成果である。
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