2007 Fiscal Year Annual Research Report
有機伝導体の電子強誘電転移における分域成長の観測と分域壁への光電荷注入
Project/Area Number |
19655054
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
山本 薫 Institute for Molecular Science, 物質分子科学研究領域, 助教 (90321603)
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Keywords | 誘電体物性 / 分子性固体 / 有機導体 / 強相関電子系 / 光物性 |
Research Abstract |
電気伝導性の電荷移動錯体α-(BEDT-TTF)_2I_3は,ウィグナー結晶型の電荷秩序によって反転対称性を失い強誘電的な永久電気分極を発生する。分極相で発現が予想される分極ドメイン構造は(イ)電場等の外部刺激によって制御できる可能性があり,また(ロ)ドメイン間の壁領域が特異な物性を示すと期待できることから,その観測は興味深い。本研究は,ドメインの実空間観測手段の開発,および光電荷注入によるドメイン壁の状態変化観測を目的として行った。下記に,本研究費補助金によって達成された成果と現在進行中の研究を示す。 (1)走査型非線形光学顕微鏡の作製:光第二高調波(SHG)の光電場位相は信号が発生する部位の分極方位に依存するため,単一ドメイン結晶からSHG信号と,分極ドメインをもつ試料からの信号とを干渉させることで,ドメイン構造をSHGのコントラストとして検出できる。本研究補助により高感度測定が可能なSHG顕微鏡測定系が完成し,ドメイン構造の可視化に成功した。 (2)分極相の光刺激・ドメイン壁への光電荷注入:上の測定には励起光として集光したパルスレーザーを用いている。光照射部はレーザーにより加熱されており,現状ではこれ以上の光照射が困難になっている。実験目的の達成には(イ)検出系をさらに高感度化して励起光強度の抑制する,(ロ)強い光励起を必要としないドメイン観察手法の探索,(ハ)試料を熱浴に密着させる,等の工夫が必要であり,現在これらを検討している。
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