2008 Fiscal Year Annual Research Report
電気化学的手法により創製された有機ー無機複合材料の特性解析とバイオ機能解析
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19655082
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡邉 順司 Osaka University, 大学院・工学研究科, 特任准教授(常勤) (60323531)
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Keywords | 多孔質膜 / 交流電場 / 炭酸カルシウム / 結晶多系 / イオン拡散 / ハイドロゲル |
Research Abstract |
本研究では、ハイドロゲルの三次元網目や多孔質膜の微小空孔のような内部空間に無機化合物を結晶化させた有機無機複合材料の創製を目的としている。これまでに電気化学的に無機イオンを有機基材中に泳動・拡散させることが迅速かつ均一な複合化に有効であることを見出してきた。本年度は、有機基材として多孔質膜を用い、交流電場を活用することにより無機化合物の異方的な結晶化に成功したので報告する。具体的には、親水化処理されたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる多孔質膜(膜厚0.04mm、平均孔径100nm)をツーチャンバーセルに挟み、左右のセル内に塩化カルシウム水溶液(10mmol/L)と炭酸ナトリウム(10mmol/L)水溶液を注入した。白金電極を介して交流電場(10V/cm)を30分間印加し、炭酸カルシウムをPTFE膜表面に結晶化させた。その結果、PTFE膜の両面に異なる炭酸カルシウム結晶を複合化することに成功した。PTFE膜のうち、塩化カルシウム水溶液接触面では熱力学的に不安定なバテライトの結晶化が有意に認められた。一方、炭酸ナトリウム水溶液と接触していた膜表面では、斜方晶を有するカルサイトが結晶化していた。これらの結晶形態の構造解析は走査型電子顕微鏡観察、X線回折、赤外分光測定から行い、PTFE膜の両面に異なる結晶形態を複合化できたことを確認した。このような異方的な結晶化が誘起された理由として、PTFE膜と接触している水溶液のpHが関与していると考えられた。交流電場印加時には、無機イオンが多孔質膜に泳動・拡散されるとともに、水溶液の電気分解が並行して起こっている。特に、塩化カルシウム水溶液では電気分解により塩素が発生しており、これが再溶解することでpHがわずかながら低下する。このpH低下が炭酸カルシウムの溶解度を上昇させてPTFE膜近傍で過飽和状態を誘起し、これが熱力学的に不安定なバテライトの結晶化に関与していると考察される。以上の研究成果は国際論文誌、総説として報告している。
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Research Products
(4 results)