2007 Fiscal Year Annual Research Report
顕微ブリルアン散乱法によるタンパク質結晶の変性と多形の研究
Project/Area Number |
19656005
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小島 誠治 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 教授 (90134204)
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Keywords | 蛋白質結晶 / 多形 / 変性 / 水和 / リゾチーム / ブリルアン散乱 / 弾性定数 / 音波吸収 |
Research Abstract |
比較的分子構造が単純でかつ様々な結晶構造を持っことが可能なリゾチームを研究対象として取り上げ、異なる結晶構造の単結晶の育成、並びにその結晶の温度、湿度などの外部環境による構造の変化を研究室独自の顕微ブリルアン散乱法、ラマン分光法、動的熱容量法などにより調べ新しい知見を得ることができた。最初に、リゾチーム水溶液と反応性が低く高密度のフロリナートとの界面を利用した二液界面法により正方晶系、斜方晶系、単斜晶系の3種類の卵白リゾチーム結晶成長に成功した。育成したこれらのリゾチーム単結晶を用いて、室温から高温にかけての温度範囲において、このタンパク質結晶、並びにタンパク質水溶液中のフォールディング状態のタンパク質分子が中間状態をへてアンフォールディング状態へと転移し、さらに高温では会合が進んでゲル状態へと転移する過程を顕微ブリルアン散乱法により詳しく調べた。その結果、非弾性散乱スペクトル中のブリルアン成分より音響フォノンの位相速度、音波吸収係数を温度、蛋白質濃度の関数として正確に決めることができた。また水和水の影響を調べるために等温条件下における脱水過程も調べ、アブラミの式によりその過程の2次元から3次元への次元性の変化を見出した。さらにこれらの構造変化について、生体保護物質であるトレハロースの添加効果も調べその効果を定量的に明らかにした。また、分子レベルでの構造変化を捉えることを目的といてラマン分光法で特徴的な分子基の特性振動を調べた。これらの物理量の多くは水和状態のタンパク質ではこれまで測られたことのない量であり、生命科学の進歩においても新たな第一歩となると考えている。
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