2008 Fiscal Year Annual Research Report
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19656019
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
井上 康志 Osaka University, 大学院・生命機能研究科, 教授 (60294047)
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Keywords | 表面増強ラマン散乱 / 生体分子イメージング / 金属ナノ粒子 / 共鳴ラマン効果 / 空間選択性 / ハイパーラマン散乱 / エンドサイトーシス / マイクロインジェクション |
Research Abstract |
本研究では、細胞内部に金属ナノ構造を直接インジェクションし、細胞内にある分子からの表面増強ラマン散乱光を検出し分光分析することで、生体分子を染色することなく直接観察・分析し、細胞の生命機能を可視化することを目的としている。本年度は、赤外活性を有するハイパーラマン散乱の金属ナノ粒子による表面増強効果に関する検討を行った。とくに、ハイパーラマン散乱は非線形ラマン散乱現象のため、光学遷移の確率が自発ラマン散乱よりも小さく、散乱光自体が微弱であることから、ハロゲン化物イオンの添加によるハイパーラマン散乱の化学的な増強効果について実験により明らかにした。化学的還元反応により作製した銀ナノ粒子(直径65nm)に色素分子を吸着させ、昨年度開発した顕微ラマン分光装置を用いて測定を行った。光源には近赤外パルスレーザー(波長=860nm、繰返し周波数80MHz、パルス幅5ピコ秒)を用いた。Br^-、Cl^-イオンなどのハロゲン化物イオンがないときには銀ナノ粒子に吸着した色素イオンからの明瞭なハイパーラマン散乱スペクトルを観察することができなかったが、0.1mmol/lのBr^-、Cl^-イオンを添加することでハイパーラマン散乱光が増強されて観察され、1184cm^<-1>、1371cm^<-1>、1592cm^<-1>等の振動バンドを計測することが可能となった。また、Br^-イオンの方がCl^-イオンよりも高い増強度を与えることも明らかにした。以上の検討から、可視・近赤外光を用いながらも赤外の振動モードも観察することができることを示すことができた。また、細胞内を移動する金属ナノ粒子をトラッキングする光学系の設計も行った。
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