2008 Fiscal Year Annual Research Report
新しい特異値分解法に基づく連立一次方程式のクリロフ部分空間法の開発
Project/Area Number |
19656025
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 佳正 Kyoto University, 情報学研究科, 教授 (50172458)
|
Keywords | クリロフ部分空間法 / 条件数 / サイクリックリダクション / 連立1次方程式 / ツイスト分解 |
Research Abstract |
クリロフ部分空間法では係数行列の条件数を低減させる前処理が重要である.擬似逆行列を乗じて単位行列に近づける方法が一般的である.本研究では,3重対角行列を係数とする連立1次方程式の直接解法であるサイクリックリダクション(CR)法に注目し,5重対角行列への変形(CR変形)とその逆変形を用いて,条件数が大きい係数行列の条件数の低減を研究目標とする.王坦氏,岩崎雅史氏との共同研究を継続し,ある一般的な条件のもとで,3重対角対称な係数行列の条件数が確実に低減することを理論的に証明した.具体的には,与えられた3重対角行列Aから5重対角行列へのCR変形において,Aにおける副対角成分の符号を反転させた行列A*を用いると,C^{-1}=(A^{-1}+(A*)^{-1})/2が成り立つことが示され,係数行列Aが正定値ならば,Cの条件数はAの条件数より小さいことが示される.平成20年度は,さらにCの最大固有値はAの角成分の最大値以下となることもわかった.以上を国際雑誌に投稿するとともに,ブロック3重対角行列についても同様な性質の研究を開始した.ところで,CR変形において,変形された5重対角行列を適当な行または列を並べ替えて3重対角に戻せば,2つの3重対角行列へ分割することができる.これを逆変形と名付ける.CR変形と逆変形を繰り返して適用することにより,係数行列の条件数を低減させながら問題を小さく分割することが可能である.この性質を利用し,CR変形は条件数が大きい大規模な正定値対称3重対角行列のdLV型ツイスト分解の前処理として,固有ベクトル,特異ベクトルの高精度計算への応用も期待される.CR変形をツイスト分解の前処理に利用する研究は従来にないものである.
|
Research Products
(3 results)