Research Abstract |
気泡を含む流体に関する多分野融合問題,具体的には,噴火様式を決定付ける要因とされる「マグマの破砕」現象の解明に取り組んだ.研究手法には,高い再現性と可視化撮影の実現性を重視して「マグマ模擬材料による常温室内実験」を採用した.まず,模擬材料として,マグマの持つ特徴である「超高粘度」「高剛性」「Maxwell型粘弾性」を併せ持つ材料である「水あめ」を用いることとして,破砕前の高圧状態において任意のボイド率で発泡させる技術を開発した.具体的には水あめに過酸化水素水と二酸化マンガンを加え,触媒反応により酸素気泡を得た.この結果,直径数10μmの気泡を大量に発生させることに成功し,模擬材料のボイド率が調整可能となった.つぎに,噴火の特徴である「急減圧」を実現する装置を用いて,減圧による発泡材料の破砕過程を高速度撮影により詳しく調べた.その結果,「脆性的破砕」と呼ぶべき現象が存在することが明らかになった.「脆性的破砕」とは,明確な試料の変形をともなわずに破砕が生じる現象(脆性破砕)と破壊が起こらずに試料が膨張する現象(延性膨張)の中間に現れる現象であり,試料にわずかな変形が生じた後に試料全体が破砕される状態を指す.このモードでは,脆性破砕にくらべて,明らかに時間遅れがある.また,減圧の特性時間(△t_<dec>)と模擬材料のMaxwell緩和時間(τ_r)との比△t_<dec>/τ_rで整理すると,脆性破砕を起こすのはボイド率によらず△t_<dec>/τ_r<1のとき,すなわち材料が固体的に振舞うときであるのに対して,「脆性的破砕」では,ボイド率が増すにつれて,破砕を起こす△t_<dec>/τ_rの上限値も大きくなることが分かった.これらの実験結果は,「脆性的破砕」が延性的(粘性流体的)な変形状態のときに生じる「破砕」であり,脆性破砕とは破砕基準が異なる可能性が高い,ということを意味する.
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