2007 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトDNAマイクロアレイを用いたナノ粒子の細胞毒性評価
Project/Area Number |
19656129
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岡部 聡 Hokkaido University, 大学院・工学研究科, 准教授 (10253816)
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Keywords | ヒトDNAマイクロアレイ / 銀ナノ粒子 / 毒性評価 / バイオアッセイ / 発癌性 / 遺伝子発現解析 |
Research Abstract |
現在生産されているナノ粒子の毒性に関する情報は限られており、人体への影響は解明されてはいない。特に銀ナノ粒子は、その優れた特性から多くの製品で用いられており、経口、経気道、経皮等様々な経路での暴露が懸念されるうえ、他のナノ粒子に比べ強い毒性を有する可能性があると報告されている。近年確立されたDNAマイクロアレイ技術は、細胞における全遺伝子発現を網羅的に解析可能であり、毒性学領域において有用な手法として注目されている。本研究では、この技術を銀ナノ粒子存在下ヒト由来細胞に応用し、銀ナノ粒子の毒性の有無およびその毒性作用について考察を行った。被験物質には、他のナノ粒子に比べ強い毒性を有する可能性が報告されている銀ナノ粒子、ナノサイズの粒子自体の影響の評価を目的に、細胞の培養容器の材料であるポリスチレン製ナノ粒子を採用した。ニュートラルレッド法によるナノ粒子暴露細胞の生存率の算出及び、ナノ粒子暴露細胞の形態変化を参考に暴露濃度を決定し、遺伝子発現解析を実施した。その結果、両ナノ粒子暴露による細胞増殖、遺伝子障害を示唆する遺伝子発現パターンが得られ、ナノ粒子が発癌性を有する可能性が示唆された。また、銀ナノ粒子暴露細胞では小核試験において小核形成率の増加がみとめられ、DNA障害性を有することが確認された。銀ナノ粒子に特有の遺伝子発現パターンとして酸化ストレス遺伝子の誘導および抗酸化酵素の抑制が認められ、また上記の小核形成率が抗酸化物質を取り込ませた実験系で減少することから、当該作用における活性酸素種の関与が示された。以上の結果よりナノ粒子が発癌性を有する可能性が示され、特に銀ナノ粒子は酸化ストレスに起因する顕著なDNA障害性を有していることが明らかとなった。
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Research Products
(1 results)