Research Abstract |
企業の資産圧縮や不動産証券化の進展により,既存建物の所有者の交替,用途変更,改修がますます増加している。それに伴い,デューデリジェンス業務の重要性が認識されている。建築設計については,意匠,機能を満足し,製品としての具現化過程を考慮した生産設計の重要性が認識されてきたところであるが,さらに「将来の建築主」の評価となるデューデリジェンス業務への対応も考慮されねばならない。しかし,所有者の交替を前提とするデューデリジェンス業務については,まだ事例が先行している状況であり,理論面から十分に検討されているとは言い難い。また,不動産鑑定評価基準における建物の価格や賃料の評価は,必ずしも建築物の物理的経年変化に基づいていない。つまり,建設や維持管理の技術的要素は,資産評価に反映されていないのである。そこで,本研究では,建築物の技術的要素,すなわち,意匠,機能,生産,保全の各要素をまず評価し,それらが収益とあわせてプロジェクト評価に反映されるための方法論の構築を目的とする。 今年度は,実態の把握のために,賃貸オフィスビルを対象として,保全の状態と利用者の評価の関係性を分析した。具体的には,建物の長期修繕計画の考え方をレビューし,修繕費の計画値と実績値の乖離を実データから明らかにするとともに,修繕費と利用者の評価の関係を示した。また,建物所有者の業態による修繕費投下戦略の差異も明らかにした。さらに,日常の管理費と利用者の評価の関係の分析,建物の社会的劣化の評価方法についても検討を進めた。
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