2008 Fiscal Year Annual Research Report
2次元伝導を示す六方晶化合物のファンホーベ特異点を利用した高性能熱電材料の創製
Project/Area Number |
19656160
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
竹内 恒博 Nagoya University, エコトピア科学研究所, 准教授 (00293655)
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Keywords | 熱電材料 / 角度分解光電子分光 / 熱電能 / 電子構造 / 電気伝導度 / 線形応答理論 |
Research Abstract |
2次元3角格子で特徴づけられるNa_xCoO_2は,巨大なゼーベック係数と金属的な電気伝導を示す.Na_xCoO_2で観測されるこれらの特徴的な熱電物性の起源は明らかではなく,その起源を解明することができれば,新しい熱電材料の材料設計指針の構築に大きく寄与できるはずである.我々は,2次元3角格子が生み出す電子構造に熱電物性の特徴を生み出す起源があると考え,高分解能角度分解光電子分光を用いてNa_xCoO_2の電子構造を明らかに,その熱電物性への影響を解明する研究を実施した. 測定した角度分解光電子分光スペクトルにおいて,波数kとともにエネルギー固有値が変化するスペクトル強度と,波数kに依存しないスペクトル強度が共存することを確認した.前者は,波として振る舞うコヒーレントな電子であり,後者は局在したインコヒーレントな電子である.電子状態がコヒーレントパートとインコヒーレントパートに分離する現象は,強い電子相関に影響を受けた典型的なフェルミ流体が示す特徴であり,Na_xCoO_2の電子状態が電子相関により強く影響を受けていることを示唆している. 角度分解光電子分光から得られた電子構造と線形応答理論から得られる熱電能の評価式を用いてゼーベック係数を計算したところ,ゼーベック係数の温度依存性及び組成依存性を定量的に再現することに成功した.その結果,Na_xCoO_2の熱電能は低温ではコヒーレントパートにより,また,高温ではインコヒーレントパートにより支配されていることがわかった.さらに,コヒーレントパートから生み出される熱電能が大きくなる原因として,2次元3角格子のファンホーベ特異点が重要な役割を果たしていることを解明した.
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Research Products
(17 results)