Research Abstract |
交付申請書に記載の通り,界面活性剤ジ2エチルヘキシル燐酸を含む油相と各種カチオンを含む水相との界面に電位差をかけ,発生する不安定性について測定を行った。不安定性は,交付申請書に記載レた界面電流のバーストととしてよりも,界面の巨視的な運動として直接視認できたので,それを観察対象とした。界面の運動は,水相に含まれるカチオンの種類と界面にかける電位差の時間変化率によって,およそ次の4種類に区分できることを見いだした。すなわち,(1)界面全体に素速く広がる不規則な波動,(2)非常にゆっくりと界面全体に広がる不規則な波動,(3)界面上の数ミリメートルの局所領域で界面が小刻みに揺れる運動,(4)全く運動しない状態,である。今回用いたII族のカチオンでは,概ね原子番号が大きく電位差の変化率が小さいほど(1)の運動が発生しやすく,原子番号が小さく電位差の変化率が大きいほど(3)の運動が発生しやすいことを見いだした。(2)の運動は原子番号が小さく電位差の変化率が小さいところで主に観測され,(4)はCa存在下でのみ現れた。この原因は,電位差に基づいて油水界面を横切って動く分子やイオンの移動速度と,界面張力の不均一性が発生するための速度のバランスに求めることができると予想される。油水界面の形状を適切に保つことで,上記の(1)〜(3)の運動パターンから,それぞれ異なる規則的運動を取り出すことができるものと考えており,次年度は,これを実現することで本研究課題の目標を達成できると考えている。また,様々な液体界面の不安定現象について,それが界面の秩序運動を生み出す場合を見いだし,その機構についても研究を行った。
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