2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19658006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
飯嶋 盛雄 Nagoya University, 大学院・生命農学研究科, 准教授 (60252277)
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Keywords | 窒素吸収 / 水吸収 / Tof-SIMS / 飛行時間型2次イオン質量分析計 / ダイズ / プレッシャーフロー説 / 水素安定同位体 |
Research Abstract |
本研究では、飛行時間型2次イオン質量分析計(Tof-SIMS)を活用し、安定同位体でラベルした水や窒素、炭素の、作物根からの吸収と放出過程を視覚化するための方法論を確立することを目的とした。初年度の研究では、まず水分の多い生体サンプルをTof-SIMSで観察するためにクライオ法による観察技術を確立した。液体窒素で凍結したダイズの根・茎・葉のサンプルをTof-SIMS試料室に導入することによって、水素安定同位体でラベルした水が、高等植物生体内で移動する様子を細胞レベルで観察することに成功した。ダイズ根から吸収された重水は、2分半後には茎の木部導管中に出現した。さらに1時間後には、葉の維管束中や、茎の師部、形成層、皮層細胞に出現した。以上のことから根から吸収された水は、プレッシャーフロー説で推定されているように、師部流となって維管束を流れること、またその水がシンク強度の高い、形成層や肥大中の皮層細胞に取り込まれる様子を世界で始めて視覚化した。予備試験として、炭素や窒素の吸収や放出を同様の手法で観察しようと試行錯誤を行うとともに、ダイズ根粒中への水の取りこみ過程の観察も行っているところである。炭素の取り込みについては取り込まれた安定同位体炭素がどのようなシグナルとなって観察可能かを数回にわたって観察したが、捉えることができていない。この原因として、極めて低濃度の安定同位体炭素では充分なシグナルとして捉えきれない可能性がある。今後、この点についてさらに検討を加える必要があろう。
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