2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19658006
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
飯嶋 盛雄 Kinki University, 農学部, 教授 (60252277)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川崎 通夫 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (30343213)
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Keywords | 安定同位体水素 / 根圏 / 飛行時間型二次イオン質量分析 / Tof-SIMS / 粘液 / 分泌 |
Research Abstract |
本研究では、安定同位体でラベルした水の植物体への吸収、あるいは放出過程を視覚化するための方法論を確立することを目的とする。本年度は、新たに研究分担者として名古屋大学(平成21年3月1日付けで弘前大学に異動)の川崎を研究組織に加え、植物の組織構造の観点から上記課題を検討した。研究協力者として、昨年に引き続き、名古屋大学大学院生命農学研究科博士後期3年(スダルシャン・ソマスンダラム)、博士後期2年(渡辺考政)、博士後期1年(吉田智晴)在籍の3名を研究協力者とした。昨年度実施した試験では水耕栽培したダイズを用いて、吸収した水素安定同位体が植物体内を木部組織から師部や形成層、皮層細胞に移行する様相を捉えることに成功した。この成果を踏まえ、今年度の研究ではとくに水吸収後の根系内での移動経路を視覚化する方法論をさらに掘り下げて検討することにより、根からの水吸収の様相を明らかにしようとした。ダイズ根粒には大量の水が流れ込むことが知られているが、ダイズを例とした植物体内での水の移動過程を多角的に考察するため、根粒への水の流入経路を特定しようとした。環状剥皮処理を施したところ、根粒内への水素安定同位体の集積過程は対照条件と変わらなかった。すなわち従来から指摘されていた師部を介しての水の流入は主要な水源ではないと判断した。100を超える切片像を観察した結果、木部導管には水の集積は認めなかったことから、木部を介しての水の流入はありえないことを明らかにした。いっぽう、それらの切片像では細胞間のアポプラスト領域と内皮細胞内に強いシグナルを検出した。すなわち、根粒への水流入は、アポプラスト経由の水の流れが主要な通路であることを始めて証明し、水流入過程を視覚化することに成功した。
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