2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19658007
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
笹沼 恒男 Yokohama City University, 木原生物学研究所, 助教 (70347350)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小柳 敦史 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 作物研究所めん用小麦研究チーム, チーム長 (40355326)
高田 兼則 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 近畿中国四国農業研究センターパン用小麦研究近中四サブチーム, サブチーム長 (40442818)
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Keywords | ミズタカモジ / コムギ / 耐湿性 / 日本在来野生植物 / 属間雑種 / 根 / 絶滅危惧種 / 遺伝的多様性 |
Research Abstract |
本研究は、高い湿地適応性をもつ在来野生ムギ類ミズタカモジを主な材料として、遺伝的多様性の解明と保全、耐湿性の評価、及び育種母本としての属間雑種の作成の3課題を遂行するものである。平成19年度は、遺伝的多様性の解明と保全について、4月から6月にかけ分布調査と採集を行い、レッドデータブックで現状不明とされていた佐賀県で現存集団を発見した。一方で、神奈川県、岡山県、愛媛県で3集団が絶滅の危機にあることを確認した。これまでに採集したミズタカモジ14集団について、葉緑体SSRマーカーによる多型解析を行い、2つのタイプが大きく東日本、西日本に分化していること、熊本、宮崎、愛媛の3集団については、両タイプが集団中に混在していることを明らかにした。耐湿性評価については、ポットを用いた耐湿性検定により、栽培品種のパンコムギは湛水条件において著しい生育阻害を受けるのに対し、ミズタカモジは、湛水条件下においても、茎長、根長、生重量において顕著な成長の違いは見られないこと、ミズタカモジとコムギのF_1雑種は、ミズタカモジよりは低いものの、湛水条件に対する高い適応性をもつことを明らかにした。また、ミズタカモジの根を顕微鏡観察したところ、イネとの生態的類似性にもかかわらず、通気組織は、イネよりもコムギに近いことがわかった。属間雑種の作成については、新規にシロガネコムギ、キヌヒメという、2種類の近代品種コムギとミズタカモジのF_1雑種を胚培養により得ることに成功した。これらの雑種は不稔であったが、多年生をもつため、現在も株で維持しており、平成20年度以降コルヒチン処理などにより種子を得ることを試みている。これらの研究成果は、平成19年11月に行われた第9回植物の嫌気応答に関する国際会議(ISPA)で口頭発表し、またその内容について、国際学術雑誌Annals of Botanyに投稿中である。
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