2007 Fiscal Year Annual Research Report
腸内フローラにおける細菌間相互作用の総合的理に向けての萌芽的研究
Project/Area Number |
19658034
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中山 二郎 Kyushu University, 農学研究院, 准教授 (40217930)
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Keywords | 腸内フローラ / 細菌間相互作用 / 菌叢解析 / 次世代高速シーケンサー / プロバイオティクス / ビフィズス菌 / クロストリジア |
Research Abstract |
約400種、100兆個の細菌が棲息するヒト腸内フローラは、宿主の健康と強く関連していることが分かってきている。各種腸内細菌と宿主との相互作用に関しては多くの研究がなされ、個々の細菌が宿主に与える影響については詳細な解析が現在進められている。しかし、実際の腸内フローラにおいては細菌は複合生物の群衆として活動しており、細菌の集団的活動を理解することがさらなる腸内細菌研究では必須である。本研究では、このような細菌間相互作用の総合的に理解のための研究の基盤的プラットフォームを構築することを目標としている。19年度は、腸内フローラの群集構造を正確に把握するための手法を構築した。これまでに、いくつかの腸内細菌叢解析法が考案されていたが、それらは簡便性と精度において完全に当該分野の研究者を満足させるものではなかった。そこで我々は、近年開発された次世代型高速DNAシーケンサーを用いて、腸内細菌叢をDNAシーケンスレベルで詳細に解析する方法を考案した。本方法では、2回のPCRとそれに続くシーケンス反応のみで精密な細菌叢データを得ることができる。実際に、我々は本方法を用いて、乳児腸内フローラ形成に対するプロバイオティクス(ビフィズス菌)投与の影響を解析した。その結果、プロバイオティクスを摂取していた生後3カ月間より、摂取を止めた後の菌叢変化に影響が現れることを見出した。プロバイオティクス摂取群では離乳後のビフィズス菌の低下がプラセポ群に比べて遅く、それと共に、クロストリジア綱の増殖が抑制されていた。このことは腸内フローラにてビフィズス菌がクロストリジア綱細菌と拮抗的な関係にあることを示している。このようなフローラの変動パターンをここで開発された菌叢解析法を用いて詳細に解析することにより、さまざまな細菌間の相互作用を見出すことが可能になると期待される。
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