2008 Fiscal Year Annual Research Report
枯死材分解過程における大型穿孔虫と微生物の共生関係および窒素動態の解明
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19658059
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保田 耕平 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (30272438)
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Keywords | 枯死材 / 穿孔虫 / 微生物 / 共生関係 / 窒素動態 / クワガタムシ科 / 菌嚢状器官 / 酵母 |
Research Abstract |
本研究は微生物との共生関係、特に空中窒素固定を含む窒素動態に注目をして、穿孔虫類が枯死材から成長に必要な栄養をどのように獲得しているのかを明らかにすることを目的としている。本年度は昨年度に引き続き、クワガタムシ科を用いた解析を行った。まず、コクワガタ幼虫の穿入した枯死材の窒素動態、特に空中窒素固定の有無を検討するため、野外で採取したヤナギ属の生材、腐朽材、幼虫の噛み砕いた材、糞、虫体について窒素・炭素の安定同位体比を測定した。残念ながら材の窒素含有率が極めて低かったため、使用できた同位体マスによる測定が困難であった上に誤差が大きく、解析に耐えうるデータを得ることはできなかった。一方、共同研究者(棚橋薫彦)を中心にクワガタ各種の解剖を行い、これまでに検したすべての種(コクワガタ、スジクワガタ、ミヤマクワガタ、ノコギリクワガタ属、チビクワガタ属、ルリクワガタ属、ツヤハダクワガタなど)の雌において腹部端に近い位置に菌嚢状器官をもつことが明らかになった。これはクワガタムシ科では初めての発見である。この菌嚢状器官は雄には認められなかった。雌から取り出した菌嚢状器官の中には酵母状の微生物が多量に含まれていたため、これを取り出し、培養に成功した株のリボソームDNAの配列を決定し、ブラスト分析を行った。その結果、これらの微生物はキシロース分解能の高い酵母の種か、それにごく近縁な種であることが強く示唆された。また、取り出したクワガタの種によって、酵母の塩基配列にも一定の変異が認められた。
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Research Products
(1 results)