2009 Fiscal Year Annual Research Report
枯死材分解過程における大型穿孔虫と微生物の共生関係および窒素動態の解明
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19658059
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保田 耕平 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (30272438)
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Keywords | クワガタムシ科 / 菌嚢状器官 / 酵母 / キシロース / 窒素固定バクテリア / nifH遺伝子 / コクワガタ / ルリクワガタ属 |
Research Abstract |
本年度も昨年度に引き続き、共同研究者(棚橋薫彦)を中心にクワガタムシ科を用いた解析を行った。まず、昨年度クワガタムシ科の多くの種の雌において腹部端に近い位置に菌嚢状器官をもつことが明らかになったが、本年度の研究で日本産のクワガタムシ科で最も祖先的なグループだと考えられているマグソクワガタについてもこの菌嚢状器官が存在することがわかった。すなわち、この器官がクワガタムシ科全体に広く存在する可能性が高いと考えられた。複数の種の菌嚢状器官から分離されたキシロース分解能の高いグループに属する酵母の遺伝子情報(リボゾームDNA)とともに、これらの成果はクワガタムシに菌嚢状器官が存在することを初めて示した論文として公表された。白色腐朽材には多量のキシロースが含まれているため、これに穿入するクワガタムシは酵母との共生によってキシロースの効率的な利用を図っている可能性が示唆される。 さらに、クワガタムシ科幼虫の空中窒素岡定としてはこれまでにアセチレン法によって現象面から示唆されているだけだが、本年度コクワガタとルリクワガタ属3種の雌菌嚢状器官と幼虫を用いて、空中窒素固定バクテリアの遺伝子検出を試みた。それぞれについて雌成虫の菌嚢状器官、腸管、を摘出し、窒素固定に関わる遺伝子nifHのプライマーを用いてPCR反応を試み、増幅をしたものについてブラスト分析を行った。その結果、コクワガタ幼虫の腸管のみPCR反応による増幅が確認され、既知のnifHに近いシーケンスが得られたため、空中窒素固定バクテリアの存在が強く示唆された。クワガタムシで初めて遺伝子から存在場所を示唆した例となる。ルリクワガタ属3種では確認できなかったため、空中窒素固定バクテリアとの共生は、コクワガタのように派生的なクワガタムシのグループで進化した特性かもしれない。
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Research Products
(3 results)