2008 Fiscal Year Annual Research Report
種子病原菌による森林生態系の個体群動態制御機構の解明
Project/Area Number |
19658064
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
市原 優 Forestry and Forest Products Research Institute, 東北支所, 主任研究員 (10353583)
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Keywords | ブナ / 種子腐敗 / 天然更新 |
Research Abstract |
森林生態系を維持保全するためには、森林樹木の天然更新メカニズムを明らかにする必要がある。森林樹木の天然更新は初期段階において菌害による阻害を大きく受けている例が多い。そのため、天然更新阻害要因としての菌害発生メカニズムとインパクトを明らかにする必要がある。本研究では冷温帯を代表するブナの天然更新が菌類によって阻害される影響を明らかにするために、ブナ種子腐敗病発生メカニズムの解明を目標としている。本年度は、野外においてブナ種子に対する病原菌の感染時期と感染率を調査した。日本海型ブナ林において10月に自然落下した種子は初冬の12月に感染しており、また、秋から融雪時までの時期別に林床に設置した種子は、秋から融雪時までいずれの時期も病原菌に感染した。このことから、ブナ種子腐敗病菌は秋から融雪時のいずれの時期でもブナ種子に感染できる状態にあり、落下種子に速やかに感染すると考えられた。これらの結果は、病原菌2種の培養温度特性調査の結果共に0℃でも生育することからも支持された。一方、種子腐敗の発生率は同一林分内の小プロット毎で比較した結果大きくばらついたことから、ミクロサイト間での感染率に差異があることが明らかになった。このことは、一見均一に見えるブナ林の林床であっても、同一林分内のリターにはブナ種子腐敗病原菌が不均一に分布している可能性を示唆しており、微地形などの環境要因が影響していると考えられる。さらに、病原菌の全国的な分布解明のためブナの分布北限から南限までの採集を数数ヵ所で行った結果、全国数ヵ所で病原菌の菌株を確立することができた。
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