Research Abstract |
19年度は,脂肪細胞3T3-L1株について,以下の基本的なデータ整備を行った。まず,マウス繊維芽細胞(3T3-L1)の脂肪細胞への分化について確認した。3T3-L1はコンフルエントにした後,さらに2日間培養した状態(Day 0)で,dexamethasone,isobuthylmethylxanthine,insulinを含む培地に交換し,2日間培養(Day 2)後,insulinを含む培地に交換して6日間培養(〜Day 8)することで分化誘導した。Oil Red Oで脂肪滴を染色したところ,分化(Day 0,Day 2,Day 5,Day 8)が進むにつれて,脂肪滴の蓄積が確認できた。そこで,RNA FISHにより,脂肪細胞に関連する遺伝子であるAdiponectin、PPARγおよび,ポジティブコントロールとしてγActinのRNAを各分化段階の細胞核で可視化することに成功した。それぞれ,FISHシグナルが認められた核の割合をカウントした結果,Adiponectin、PPARγともに,Day 0で多くの割合の細胞で転写が活性化していたが,それ以降,PPARγは転写している細胞の割合が減少した。続いて,細胞集団全体のRNA量を解析するために,RT-PCRおよび定量的リアルタイムPCRを行ったところ,いずれの遺伝子もRNA量が大きく増加するのはDay5以降であった。 これらの結果は,3T3-L1細胞は分化の初期段階においてAdiponectin、PPARγは,RNAの量自体は少ないものの,多くの割合の細胞で転写が活性化していることを示す。また,PPARγにっいては分化の進行に伴い細胞集団全体のRNA量は増加する一方で,実際に転写している細胞の割合は減少していることが分かった。すなわち,PPARγの転写が増大する分化段階には,実際に転写している細胞は一部に限られている可能性を示唆している。PPARγが脂肪細胞への分化に不可欠な因子であることから,一部の細胞で転写しているPPARγ,もしくはそれによって誘導される何らかの因子が他の細胞に分泌される等のメカニズムが存在する可能性も考えられる。この他,マウス脂肪組織由来幹細胞(Adipose-derived Stem Cells:ASCs)の培養方法,およびその分化誘導の方法について検討を行った。
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