Research Abstract |
(1) 2〜6環PAH,その水酸化(OH)体,キノン(Q)体,ケトン(K)体を試験化合物とし,酵母を用いるtwo-hybddアッセイ法により,エストロゲン様/抗エストロゲン活性を測定し,分子モデルプログラムを用いて計算した化学構造パラメータとの構造活性相関を調べ以下の結果を得た。1)エストロゲン様活性は,主として4環構造を有するOHPAHの中に強いものがあるが,Q体,K体は活性を示さない。2)抗エストロゲン活性は,4,5環構造を有するOHPAHの中に強いものがあることに加えて,4環構造を有するQ体にも比較的強いものがあった。3)OHPAHの平面環状構造の長軸(L)と短軸(B)の比(L/B比)を見ると,強いエストロゲン様活性を示したものの値は1.60〜1.73と狭い範囲に存在するのに対して,強い抗エストロゲン活性を示したものの値は1.28〜1.73と範囲が広かった。4)L/B比とOH基の酸素原子とそれから最も遠い水素原子の間の距離(O-H距離)の関係は,強いエストロゲン様活性を示したOHPAH類はE_2やジエチルスチルベストロール(DES)の値を含む狭い範囲に集中したが,強い抗エストロゲン活性を示したOHPAH類はこれと,異なる広い範囲に存在した。以上から,PAHが強いエストロゲン様活性を示すためにOH基が必須であり,4環の長方型構造の長軸方向に結合していること,一方,PAHが強い抗エストロゲン活性を示すためにはOH基は必須でなく,4環の長方型のQ体でもよいという構造活性相関が明らかになった。 (2)1-ニトロピレンから大気中で生成する水酸化の中に,強い抗エストロゲン作用を示すものがあることを発見した。 (3)ディーゼルエンジン排出粉じんの中にエストロゲン様作用を示す物質として,3-メチル-4-ニトロフェノールと2,6-ジメチル-4-ニトロフェノールを同定した。
|