2008 Fiscal Year Annual Research Report
認知症患者における後見制度鑑定に必要な臨床検査の検討,付随する制度的問題点の検討
Project/Area Number |
19659131
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大平 雅之 Keio University, 医学部, 助教 (70407104)
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Keywords | 後見人制度 / 医療同意 / 認知症 |
Research Abstract |
認知症患者として診断されている患者の重症度、成年後見制度の利用の有無をデータ化し、認知症診断の内容、認知症の程度との相関関係を明らかにすることを目的とし,平成20年1月より当院メモリークリニックが開始されたため,実際に検討を開始するための準備を継続中である。 具体的には各論文を収集,調査方法の比較検討を行った。特に諸外国の後見人制度について比較検討した。たとえば、成年後見制度の申立件数は年々増えているものの、認知症高齢者が約170万人いることを考えるとその利用は未だ低調である。その主な原因の一つとして申立人の範囲の問題がある。諸外国では、後見裁判所が職権で後見人を指定できることに対して、本邦では申請主義を採用し、その結果、親族や市町村長らからの申立てがない限り、手続を開始することが出来ず、結局は被後見人として救済されるべき患者が救済されない現状がある。そして、現在の後見人制度では、後見人に医療行為に関する同意権がないこともやはり実際の現場における重大な問題として認識されている。さらに,本年度中は,東京弁護士会で開催された高齢者人権委員会主催の講習会などに出席の上,後見人制度の実態について把握に努めた。また医療同意に関する法律案の提出案の検討がなされているところであり,これを入手の上検討を行った。法務省『成年後見制度の改正に関する要綱試案補足説明』の解説書によれば、被後見人等への医療行為に関する成年後見人の同意権・決定権に関しては、社会一般の合意がなく、本人の自己決定権や基本的人権との抵触が解決されていない点を理由として、緊急事態の場合には、法的には緊急避難や緊急事務管理の論理で対処するということになっているが、やはりこのような例外的規定によって初めて医療行為が可能となるとする解釈は、臨床現場の概念から解離しているとの印象をぬぐえず、積極的に規定を設けるべきである。
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