2007 Fiscal Year Annual Research Report
塩酸ゲムシタビンによる膵がん細胞のEMT誘導の検証と分子細胞機構の解明
Project/Area Number |
19659190
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
島崎 猛夫 Kanazawa Medical University, 医学部, 講師 (50377420)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
元雄 良治 金沢医科大学, 医学部, 教授 (80210095)
石垣 靖人 金沢医科大学, 付置研究所, 講師 (20232275)
友杉 直久 金沢医科大学, 付置研究所, 教授 (80155580)
源 俊成 金沢大学, がん研究所, 教授 (50239323)
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Keywords | GEMCITABINE / EMT / 転移・浸潤 / 遊走能 / 遺伝子解析 |
Research Abstract |
現在,膵癌の標準的治療薬は,塩酸ゲムシタビン(以下GEMと略する)である。しかし,その奏功率は20%以下と非常に難治性の癌である。ヒト膵癌培養細胞株PANC-1において、GEM投与により細胞間の接着乖離、葉状偽足、糸状偽足が強く発現し,Epithelial-Mesenchymal Transition(EMT:上皮間葉移行)という現象で知られている形態変化を認めた。最近になって上皮細胞の癌化及びその進展は、基本的にはこのEMTに基づく現象であるとされている。これまで多くの研究が癌のEMTと悪性度や予後との関連を示しており、GEMの投与がEMTに相当する形態変化を誘発したという事実は、癌の治療を考える上で非常に重要な問題である。つまり、本来治療として行っているはずの抗がん剤が、癌の転移・浸潤を誘発する可能性を示す結果である。臨床的にも、抗がん剤治療後に生じた再発・再燃がんでは、局所浸潤や転移が起こりやすくなることが一般的に知られている。今年度の成果として,GEMにより大きく発現が変化する遺伝子群を同定した.又,GEMによる形態変化は,EMTであり,さらに培養細胞の遊走能が亢進することが明らかとなった。これらの変化は,既知のEMT誘導の代表シグナルであるTGFβを介していないことが明らかとなった。腫瘍移植ヌードマウスによるGEM投与実験では,少量のGEM投与では,腫瘍が増大する傾向であった。これらの結果は,GEM投与による腫瘍の転移誘発を示唆するものであった。ある分子標的をターゲットとして,抑制剤単独あるいは抑制剤併用GEM投与にて,マウスの腫瘍は有意に縮小し,EMT誘導現象は消失した。よって,転移誘発を抑えながら癌を治療する新しい治療方法の開発の基礎となる重大なデータを得ることができた。
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