Research Abstract |
新規腫瘍抗原の同定に関しては,当科で外科切除を行なった肺癌症例より肺癌細胞株の樹立を行い,肺癌細胞株と所属リンパ節リンパ球を共培養することで腫瘍特異的な細胞障害性を示す細胞障害性Tリンパ球(CTL)を誘導した。誘導したCTLの認識する腫瘍抗原の同定をcDNA発現クローニング法で行なった結果,今年度は新規腫瘍抗原GITR(glucocorticoid-induced tumor necrosis factorreceptor-related gene),RPL19(Ribosomal ProteinL19)を同定した。GITR遺伝子は,通常のスプライシングによる蛋白発現によらずに,肺癌に特有の分子再構築(post-translational protein splicing)に伴う抗原の提示をなされていることが示唆され,現在,抗原提示機構の解明を行っている。RPL19は,正常肺組織に比べて,肺癌組織において高発現していることが明らかになった。また,siRNAを用いた遺伝子解析によりRPL19は,肺癌細胞の増殖に関与していることが示唆された。 一方,新規癌、精巣抗原KK-LC-1の肺癌における発現解析に関しては,2001年より2005年までの非小細胞肺癌手術症例239例を対象として癌精巣抗原KK-LC-1の発現をRT-PCR法で解析した。非小細胞肺癌239例におけるKK-Lc-1の発現率は,78例(32.6%)であった。組織型別の解析においては,扁平上皮癌36.5%,腺癌32.1%であった。 平成20年度は,これまでに同定した腫瘍抗原におけるCTLに認識されるエピトープの同定および,さらなる新規腫瘍抗原の同定を目指し,肺癌に対する特異的免疫療法の確立を行う。
|