2007 Fiscal Year Annual Research Report
子宮内胎児発育遅延における胎盤のアディポネクチン受容体を中心とした解析と治療戦略
Project/Area Number |
19659423
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
林 卓宏 Sapporo Medical University, 医学部, 講師 (70274917)
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Keywords | 産科学 / 胎児発育 / 絨毛細胞 / アディポネクチン |
Research Abstract |
胎盤胎盤絨毛には母体血と胎児血を隔てて糖・脂質・血液ガスなどの物質交換を行う重要な機能がある。従って、絨毛細胞の機能不全は子宮内胎児発育遅延(IUGR)を招く恐れがある。adipocytokine、特にadiponectin (ApN)は脂肪・骨格筋および肝細胞における糖および脂質代謝に重要な役割を果たしている。つまり、ApNは胎盤絨毛細胞の機能にとっても重要な役割を果たしている可能性があり、これらadipocytokineのネットワークを中心に研究することは産科的疾患の病態解明・治療にもつながる可能性がある。本研究では、原因不明および母体要因によるIUGRについて、adiponectin receptor (ApNR)およびその下流蛋白の発現につき、原因不明のIUGR症例胎盤を中心に研究中である。ヒト胎盤におけるAdipoR1およびAdipoR2 mRNA発現を検討したところ、AdipoR1、AdipoR2ともにIUGRにおいて減少傾向にあった。蛋白発現ではAdipoR1では正常とIUGRで差は認めなかったが、一方、adiponectin、AdipoR2蛋白発現はIUGR胎盤において有意に低下していた(p<0.05)。このようにadiponectinの分泌もレセプターもIUGR胎盤ではダウンレギュレーションしていることより、レセプター下流の蛋白発現も同時に低下していることが考えられたため、AMPK、PPARαおよびp38MAPKの蛋白発現につき検討した。これらの蛋白の中で、p38MAPKの活性型であるリン酸化p38MAPK発現は、正常およびIUGR胎盤で認められた。そこでtotal p38MAPKを基準にしてリン酸化p38MAPKの発現比較したところ、有意にIUGR胎盤で発現が低下していた。胎盤絨毛細胞ではp38MAPKの下流に位置すると考えられるPPARγの発現は、IUGR胎盤において有意に低下している。PPARγは絨毛細胞の分化・血管新生に関与していることから、adiponectin receptorの数的低下がその下流のp38MAPK発現に影響し、さらにPPARγ発現低下をまねき、最終的にIUGR胎盤絨毛細胞の機能不全をもたらすことが示唆された。
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