Research Abstract |
研究の目的:未分化間葉系幹細胞(MSCs)は組織再生で移植組織や器官として分化することが可能であり,骨芽細胞から骨へ分化させることもできる.S100A4遺伝子はS100カルシウム結合蛋白に属しており,MSCsでの骨芽細胞遺伝子発現を抑制し骨芽細胞分化を調整している.また,RNAiは遺伝子特異的な翻訳後のサイレンシングであり,遺伝子サイレンシングとして強力なツールとなり得る.そこで我々はヒトMSCsにおいて,S100A4遺伝子をRNAiにて発現阻害し骨芽細胞へ分化させることを試みた.さらに,MSCsでのS100A4遺伝子の発現阻害による影響を,マイクロアレイを用いて観察した. 研究実施計画と成果:ヒトMSCを培養し,S100A4 siRNAを細胞内に導入した.Real time PCRを行い,S100A4遺伝子の発現を定量的に観察した.同様にReal-time PCR microarray analysisでは84の骨形成遺伝子発現を分析した.また,Western blotによりS100A4遺伝子の蛋白レベルの発現を観察した.S100A4siRNA導入3,7,14,21日後,すべての濃度でコントロールと比較して,S100A4遺伝子発現が抑制された.Western blotではS100A4siRNA導入7,14,21日後でS100A4遺伝子蛋白発現が抑制されていた.遺伝子導入3日後では37の遺伝子が,コントロールと比較して2倍以上あるいは,0.5倍以下の発現変化がみられた.導入7,14,21日後ではそれぞれ29,4,10の遺伝子が変化した. 本研究では,MSCsのS100A4遺伝子発現抑制により,多数の骨関連遺伝子発現が上昇した.今回用いたアプローチと適切な遺伝子デリバリーシステムを開発することによって,1つの有効なティッシュエンジニアリングの手法として応用可能になるものと考えている.
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