2007 Fiscal Year Annual Research Report
ドライマウスの分類および診断基準の確立〜唾液を用いた新しい診断方法について〜
Project/Area Number |
19659532
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中村 誠司 Kyushu University, 大学院・歯学研究院, 教授 (60189040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白砂 兼光 九州大学, 大学院・歯学研究院, 教授 (30093420)
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Keywords | 口腔粘膜疾患 / 唾液 / 検査 / 診断 / フローサイトメトリー / サイトカイン / ドライマウス / シェーグレン症候群 |
Research Abstract |
ドライマウスの代表的疾患はシェーグレン症候群であるが、糖尿病や腎疾患などの全身疾患、薬物、ストレスなどの種々の原因によっても引き起こされるため、その的確な診断と治療は容易ではない。本研究の最終目標は、鑑別診断のためだけではなく、経過に応じて繰り返し施行できる非侵襲的な検査方法の確立である。従来の研究により、唾液中にシェーグレン症候群の診断や病態の把握に有用な物質が存在することが示唆されたため、本研究ではその知見をもとに唾液を用いた新たな検査方法を確立することが目的である。 今年度はまず、健常ボランティア、シェーグレン症候群患者、薬剤性ドライマウス患者、放射線照射後の患者から、1)通常のガムテストやサクソンテストで得られる刺激時の全唾液、2)安静時の全唾液、濾紙を下唇粘膜に付けて採取する小唾液腺由来の唾液を採取した。測定方法としては、cytometric bead array systemという高感度かつ微量の検体で解析できる方法を用いたが、この方法は特定のタンパクに対するモノクローナル抗体で標識した一定の蛍光を発するビーズを用い、サンドイッチ法にて唾液と反応させ、その後にフローサイトメトリーによりタンパクの定量を行うシステムである。さらに、異なる蛍光強度を有するビーズを用いることで、微量のサンプルから同時に数種類の物質の濃度を測定することができるという利点がある。現在までの予備的研究結果ではあるが、T細胞由来のサイトカイン(IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IFN-γ、TNF-α)に対する抗体、T細胞サブセットの浸潤に関わるケモカイン(IP-10、RANTES、MIP-1α、MCP-1、TARC、MDC)に対する抗体、ヒトのインムノグロブリンに対する抗体、さらにはSS-AおよびSS-B抗原で標識したビーズを用い、それぞれの定量化を行ったところ、健常者と比較して、シェーグレン症候群患者ではIL-1β、IL-6、IL-8、IL-10、TNF-αが高濃度に含まれていた。また、薬剤性ドライマゥス患者や放射線照射後の患者と比較すると、シェーグレン症候群ではIL-10が特異的に高値であることが判った。さらに、ケモカインを検索したところ、MDCがシェーグレン症候群患者で特異的に高かった。また、これらの結果は唾液採取方法では差はなかった。 以上のように、唾液中のサイトカインやケモカインを測定することにより、鑑別診断が可能であることを示唆された。さらにシェーグレン症候群の重症度によってもこれらの濃度が異なっており、シェーグレン症候群の病態の把握が可能であることも示唆された。今後は症例数を増やして結果を確認するとともに、測定すべきサイトカインやケモカインを選定していく予定である。
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