2007 Fiscal Year Annual Research Report
認知操作を中心としたヒトの高次思考を司る神経機構の解明
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19670001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂井 克之 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 准教授 (70376416)
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Keywords | 神経科学 / 認知科学 / 脳・神経 / 前頭葉 / 非侵襲的脳活動計測 |
Research Abstract |
与えられた情報を特定のルールに基づいて変換する働きである認知操作の脳内表象のモジュール性とその成立メカニズムを明らかにするため、Stroop課題を行っている際の健常被験者の脳活動をfMRIにより計測しmulti-voxel pattern analysisを用いて脳局所の活動空間パターンを解析した。異なった課題のルールが外側前頭前野、前部帯状回で表象されている可能性が示唆された。これらの領域の活動が課題切り替えに際して増加することも明らかとなったが、これが課題ルール特異的な活動空間パターンの増強を伴っているかについて現在解析中である。またこの前頭葉領域と後方連合領域との間のシステムレベルでの相互作用解析の結果、外側前頭前野では課題に関連した感覚情報の選択を、前部帯状回ではこれにもとづいた行動の選択をより強く反映していることが明らかとなった。さらに研究代表者が独自に開発した磁気刺激誘発性脳電位追跡システム(TMS-EEG)を用いて、前頭前野で成立した認知操作の表象が後方連合領域に対して与える影響を解析した。Pro-Saccadeとanti-saccadeを組み合わせた眼球運動ルール切り替え課題を行っている健常人被験者の前頭眼野に磁気刺激を与えたところ、これから行おうとしている眼球運動ルールによって異なった空間分布パターンの誘発電位が頭頂葉を中心とした後方連合領域に生じた。眼球運動の標的が提示される前から眼球運動ルール特異的な磁気刺激誘発電位が観察されたことは、抽象的なレベルでの認知操作の表象が前頭葉から後方連合領域にかけての信号伝達効率として成立していることを示す。現在、通常の脳波解析で得られる前頭前野の局所活動パターンと、磁気刺激誘発電位をもちいた脳領域間信号伝達効率の関係を解析中である。認知操作的思考の成立・実行へと到る流れを、脳局所レベルと脳システムレベルの両面から検証してゆくという意味でまったく新しい知見が得られるものと考える。
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