2009 Fiscal Year Annual Research Report
認知操作を中心としたヒトの高次思考を司る神経機構の解明
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19670001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂井 克之 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 准教授 (70376416)
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Keywords | 神経科学 / 認知科学 / 脳・神経 / 前頭葉 / 非侵襲的脳活動計測 |
Research Abstract |
与えられた情報を特定のルールに基づいて変換する働きである認知操作の脳内メカニズムを、局所脳活動パーンと脳領域間機能的結合から明らかにするのが本研究課題の目的である。研究代表者が独自に開発した磁気刺激誘発性脳電位追跡システム(TMSEEG)を用いて、前頭前野で成立した認知操作の表象が後方連合領域に対して与える影響を解析した。この手法は磁気刺激によって誘発された神経インパルスが脳領域間を伝播する様相を10ミリ秒単位で明らかにするものであり、前年度の代表者らの研究によりこれが課題特異的な脳領域間信号伝達効率を反映していることが明らかにされた(Morishima et al., 2009)。平成21年度はpro-saccadeとanti-saccadeを組み合わせた眼球運動ルール切り替え課題を行っている健常人被験者の前頭眼野に磁気刺激を与えた。磁気刺激誘発性脳電位は被験者がこれから行おうとしている課題ルールを反映していると予想されたが、実際には被験者がその直前の試行で行った課題のルールを反映することが明らかになった。一方、脳波にもとづく事象関連電位は、被験者がこれから行おうとしている課題ルールを反映していた。この結果は局所脳活動で表象される課題情報と、脳領域間ネットワークのシナプス結合強度に反映される課題情報が乖離していることを示している。さらにこのネットワークに対する前試行の課題の残遺効果が強いほど、被験者の眼球運動反応が遅延することが明らかとなった。すなわちここで計測された脳領域間の機能的結合度は機能的な意義を持つことが不された。本成果は我々の手法を用いることで、健常人の脳で機能的なシナプス結合度を非侵襲的に計測できることを示唆しており、画期的な脳機能計測技術開発であると考えられる。
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